2024年11月24日 (日)

流行してきたXEC亜株に対する現行「JN.1」ワクチンの効果

オミクロン株は世界各国で数種類が群雄割拠状態で、日本国内ではこれまで「KP.3」亜株が流行していましたが、9月以降「XEC」亜株の比率が増えています。

20241121 東京都保健医療局の解析結果です 9/30以降、XECが増えてきています

「X」は組換え型を示す頭文字です。2023年秋冬のワクチンは「XBB.1.5」で作られたワクチンでしたね。

「XEC」亜株は前回ブログにも出ていました。JN.1系統の一番下にいました

2_20241124203501 

より詳しくは「KS.1.1(JN.13.1.1.1)」亜株と「KP.3.3(JN.1.11.1.3.3)」亜株の組換えとのことです(東大医科研 佐藤 佳教授ら)

20241106

さて、「XEC」亜株に対する現行「JN.1」ワクチンの効果はどうなのでしょうか。2024.11/7ドイツから文献が出ていたので抜粋・引用します。

健康な医療従事者33人(男性46%、年齢中央値45歳)に「JN.1」ワクチンを接種し21日目の中和抗体価を調べたものです。結果は『抗体価は上昇した。ただし「JN.1」亜株に比べると「XEC」亜株の抗体価上昇は少なかった(2.9分の1)』というものでした。

より詳しくは『JN.1、XEC株に対するワクチン接種前→後の中和抗体価(GMT)はそれぞれ4172,43075840であり両方とも上昇したが、JN.1株に比べXEC株は2.9分の1の低値でした』
20241107-jn1-vaccine-parora2 左;「JN.1」亜株に対する中和抗体価。右;「XEC」亜株に対する中和抗体価(中央;アメリカなどで流行した「KP.3.1.1」亜株)

「XEC」亜株は「JN.1」亜株の子孫同士による組換え亜株のようです。その意味で現行「JN.1」ワクチンは(少なくとも2023年の「XBB.1.5」ワクチンより)効果は高いと考えられますし、2023年接種したワクチンによる中和抗体価はすでに低下している時期ですから、重症化しやすいとされる高齢者や免疫低下している方(血液疾患、慢性肺疾患、慢性腎臓病など)は接種が望ましいと思われます。(横浜市では高齢者接種率が11月上旬ころで約10%と低迷しているそうで、この冬流行が危惧される一因となっています)

変異株について 東京都保健医療局

SARS-CoV-2オミクロンXEC株のウイルス学的特性の解明|東京大学医科学研究所

Impact of JN.1 booster vaccination on neutralisation of SARS-CoV-2 variants KP.3.1.1 and XEC - The Lancet Infectious Diseases

2024年10月 1日 (火)

10月に始まる新ワクチンの効果

2024.10月から65歳以上と60~64歳で1級相当高リスクのある方を対象とするJN.1スパイクタンパク由来の新型コロナワクチン定期接種が始まります。

系統樹的にはJN.1亜株は現在日本で流行中のKP.3、アメリカで流行中のKP.3.1.1の上流であることがわかります。2023年の前コロナワクチンは別系統のXBB.1.5由来でした。

1_2024100122580120240928

 

東京都のオミクロン流行株解析;9月末まで「KP.3」が主流

20240926

6月5日ファイザー社発表のマウスによる臨床前データでは、JN.1ワクチンは前ワクチンのXBB.1.5ワクチンよりKP.3亜株に対して高い中和抗体価を示しています。

202406052

9月24日Lancet Infectious DiseaseにドイツからJN.1ワクチンのヒト接種後抗体価データが出たので抜粋します。医療従事者42人(年齢中央値47歳、男性48%)で平均ワクチン接種回数4.5回、ワクチン接種者41人中36人(88%)が1回以上COVID-19罹患し、42人中41人(98%)がオミクロン抗原に暴露されているハイブリッド免疫保有率が高い集団での研究です。

接種後13日で血清中和能を偽ウイルスアッセイ(水泡性口内炎ウイルスをベースとした)で評価したところ、全接種者で流行株の中和抗体価を強化しました。XBB.1.5、KP.3は有意な上昇ではないと記載されていますが、XBB.1.5は投与前値が高いため増加に乏しく、KP.3は上昇傾向は認められます。

Figc1

考察として、今回対象者の多くがオミクロン関連ハイブリッド免疫を持っていたため、JN.1ワクチンによって惹起された液性免疫(抗体価)の質・量に影響した可能性があり、その他の集団の代表とは言えないかもしれないと述べています。最後のFig.Cの左側(before booster)の通り、過去のワクチン+COVID-19感染だけでは現在流行中のKP.3亜株などへの抗体価は不十分であり、JN-1由来新ワクチン接種が重症化予防・後遺症減少のため必要と思われます。

Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee June 5, 2024 Meeting Presentation- Pfizer/BioNTech Clinical and Preclinical Supportive Data 2024-2025 COVID19 Vaccine Formula (fda.gov)

Humoral immunity after mRNA SARS-CoV-2 omicron JN.1 vaccination - The Lancet Infectious Diseases

PowerPoint プレゼンテーション (tokyo.lg.jp)

CDC COVID Data Tracker: Variant Proportions

 

 

 

 

 

2024年8月14日 (水)

コロナ後遺症は減ってきたが、かなりいます

デルタ株以前、デルタ株、オミクロン株流行期におけるコロナ後遺症  Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection in the Pre-Delta, Delta, and Omicron Eras  Yan Xie, Ph.D. N Engl J Med 2024;391:515-525 DOI: 10.1056/NEJMoa2403211

『要約

背景>多臓器に影響を及ぼす新型コロナウイルス感染症後遺症(PASC)に対して、パンデミック中の新型コロナウイルス変異が影響した可能性がありますが、これに関して明らかにされていません。

方法>アメリカ合衆国退役軍人省の健康記録から、202031日~2022131日の期間の441,583人の新型コロナウイルス感染者と4,748,504人の非感染者のデータを利用しました。デルタ株以前、デルタ株、オミクロン株流行期における感染1年後のPASCの累積発生率を推定しました。

結果>(Fig.2

Fig2_20240814214701 新型コロナワクチン未接種者におけるデルタ株以前、デルタ株、オミクロン株期の100人当たりの発症率はそれぞれ10.429.517.76人でした。デルタ以前からオミクロン期の減少は100人当たり2.66人、デルタ期からオミクロン期の減少は1.75人でした。ワクチン接種者ではデルタ期5.34人、オミクロン期3.50人で、減少は1.83人でした。ワクチン接種者の累積発症率は低く、デルタ期で100人当たり4.18人、オミクロン期で4.26人低下しました。分解分析法では、デルタ株以前+デルタ株期の合計に比べてオミクロン期は5.23人減少し、28.11%が流行株関連の減少、71.89%がワクチン効果による減少でした。

結論>新型コロナウイルス感染1年後のPASC発症はパンデミック経過を通して減少しましたが、オミクロン期のワクチン接種者であっても依然としてそのリスクはかなりあります。

Fig.4-B

Fig4_20240814214801

障害調整生命年(DALY disability-adjusted life-year;病的状態、障害、早死により失われた年数を意味した疾病負荷を総合的に示すもの。1 DALY1年間の健康生活が失われたことと同等。)オミクロン期、ワクチン接種者であっても1年間で100人当たり3.52人が健康生活を奪われています。

本論文の限界;高齢白人に偏っていること。ワクチン種類・回数を検討していないこと。初回感染後PASCの検討であり反復感染後の影響を検討していないこと。』

これまで後遺症は罹患者の10~20%とされてきたのと比べて本論文の10.42~9.51%(デルタ株以前・デルタ株)はやや低めで、やはり対象が白人高齢者に偏っているためである可能性があります。したがって、日本国内で多数派の「ワクチン接種後+オミクロン株」では本論文の3.5%より高くなると考えられます。

国内外でのワクチン接種率が低下しさらにKP.3のように従来のワクチン・既感染による免疫から逃避する亜株が流行しています。既感染率の低い我が国では第〇波といった流行がまだ起きており、増加した感染者のうち一定割合(3.5~7.7%またはそれ以上)が後遺症発症することが危惧されます。対策として、10月からのワクチン接種に期待がかかりますが、これまでのXBB1価ワクチンでは効果十分とは言えないため、ワクチンの元となる亜株選択が重要となります。また感染したら適切に抗ウイルス薬治療を受けることが後遺症発症減少につながります。

 

2024年7月 2日 (火)

建物内のCOVID-19予防について(CDCより抜粋)

 新型コロナ、大流行はしなくなりましたが一定数が医療機関を訪れるようになりました。普通にかかる病気になりつつありますが、やはり普通のカゼよりは重い症状が出る傾向があります。
 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)ホームページ「COVID-19」から。主に建物内の感染リスク低下について、所有者・勤務者様の立場での注意が書かれています。特に建物の管理者様、室内でお仕事をされる方が注意すべきご参考になれば幸いです。

 少しでも新鮮な外気を取り入れること、高性能フィルター付空気清浄機、紫外線滅菌装置、ポータブルCO2モニターなどが挙げられています。建物やお仕事内容により検討・変更が必須です。

 

CDCホームページより抜粋(2024/07/01現在)

COVID-19Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) | CDC

・COVID-19 ワクチン

・最重要点

   あなた自身と他人をどのようにして守るか

   医学的に注意の必要な人々について

   建物における換気

 

建物内の換気の改善Improving Ventilation In Buildings | CDC

基本的戦略 まず、メーカー指示通りにメンテナンス(フィルター含む)を行ってください

さらなる戦略

1. 1時間で5回以上、空気が入れ替わるようにすること

2. フィルター性能をアップグレードする、具体的にはMERV-13(0.310μm以上の粒子をキャプチャー)以上とすること

3. 冷暖房(HVAC)システムを、多人数がいるときはONAutoでなく)とし、より多くの空気還流を促すこと

4. 窓・ドア・予備排気を利用し新鮮な空気を取り込むこと(少し窓を開けるだけでも違います)

5. 高効率空気清浄機を使用すること

6. 紫外線空気清浄機を導入すること

7. ポータブルCO2モニターを使用すること;800ppm以上で新鮮な外気を要します

 

建物における換気Ventilation in Buildings | CDC(アップデート;2023/3/12

知っておくべき事項

感染を最小限とするためにまず重要なことは“悪化させることをするな”です。建物の所有者・勤務者が戦略を立てる際、知識や経験に乏しければ、専門家の助言を求めることを強く勧めます。

 

建物の所有者・勤務者向け、室内気改善・公衆衛生保護の指針Clean Air in Buildings Challenge | US EPA

キーとなるアクション

・室内気を清浄化するアクションプランを策定すること

・新鮮な空気取込を最適化すること

・空気ろ過・清浄化を高めること

・共同体の参加促進、対話・教育を行うこと

 

建物内の空気清浄の試みClean Air in Buildings Challenge (epa.gov)>予備排気を装備すること 

20240701  』

 

病院レベルでは1時間で5回空気が入れ替わることが理想的ですが、不特定多数の出入りがある建物では、窓を開ける/換気扇を取り付けるなど少しでも新鮮な外気を取り込んだり、高性能フィルターや紫外線滅菌付空気清浄機の導入が、新型コロナ予防に効果的です。

 

2024年1月29日 (月)

XBB 1価ワクチンは現在の流行株にも有効

「コロナ第10波」と言われる現状です。昨日地元の休日診療所当番で出勤し、30数名にコロナ・インフル検査を実施いたしましたところ、8割前後いずれか陽性(コロナ>インフルA>インフルB)でした。陽性率が高いと地域流行中とされますので、現在横浜市は地域流行中とみられます。

ニュースでご存じの通り、2022年はBA1~BA4/5、2023年はXBB~EG.5.1(エリス)他、2024年はJN.1が流行の兆しを見せています。JN.1のような新興亜株に対して、2024.3月まで受けられるXBB 1価ワクチンは有効なのでしょうか。WHOは下記文献を根拠にその有効性を認めています。

XBB.1.5 monovalent mRNA vaccine booster elicits robust neutralizing antibodies against emerging SARS-CoV-2 variants (biorxiv.org)

「XBB.1.5 1価ワクチンブースターは新興SARS-CoV-2亜株に対する中和抗体価を著明に増加させる」 以後いつものように抜粋・提示いたします。

アジアの新規感染の40%がHK.3、ヨーロッパではJD.1.1、BA.2.86、JN.1がそれぞれ6.5%、4.1%、11.8%、北アメリカの34%がHV.1 と新興亜株が拡大しています

Fig1a_20240129141401

(ちなみに国立感染症研究所感染症疫学センター報告では「2024.1/1~1/7のゲノムサーベイランスではJN.1系統が最も多い」COVID-19_2024w02.pdf (niid.go.jp)

HV.1、HK.3JD.1.1XBB系統(C)、JN.1BA2.86がわずかに変異したもの(D)です

Fig1bcd

リアルワールドでのワクチン効果を見るため、野生株ワクチン34回・BA.5 2価ワクチン1回接種を受けた60人を対象としました。3つのコホート:

1)新型コロナ未感染+XBB.1.5 1価ワクチン(XBB.1.5MV”)(B)

2)最近のXBB既感染+XBB.1.5ワクチン接種なし(“XBB infx”)(C)

3)オミクロン既感染+XBB.1.5ワクチン(“Omicron infx+XBB.1.5MV”)(D)

さらに3)2023年以前の感染(XBBより前のオミクロン感染)と2023.2月以降の感染(XBB感染)の亜群に分けました。

各亜株(D614GBA.5XBB.1.5EG.5.1HV.1HK.3JD.1.1JN.1)に対するVSV偽ウイルスを作製し、各コホートについてワクチン投与前後の中和抗体価を測定しました。

Fig2bcd ※

1)D614Gに対する中和ID50(50%阻止濃度)2倍、BA.56.8倍に上昇しました

XBB.1.5EG.5.1HV.1HK.3JD.1.1JN.113.3~27.6倍でより上昇しました

2)D614G;3.0倍、BA.57.1倍、XBB.1.5以降;13.4~28.6

3)予想通り最大の抗体価でしたが上昇自体は大きくありませんでした。ワクチン投与前、既感染によりすでに抗体価が高かったことが理由です。D614GBA.5に比べXBB.1.5以降の亜株における上昇が大きかったことは注目すべきと考えられました。既感染の時期(以前のオミクロンかXBB)による有意差はありませんでした(下図)。

Figs2

※XBB.1.5 1価ワクチン接種後の中和抗体価ID50は、D614Gが最大(6,08822,978)、次いでBA.5(3,12115,948)でした。XBB.1.5BA.5に比べると3.15.6分の1、EG.5.1に比べるとわずかに良い感受性(1.01.2)を示しました。新興亜株HV.1HK.3JD.1.1はほぼ同様で、XBB.1.5に比べ1.92.8分の1の感受性でした。JN.1は最も低い中和抗体価でありXBB.1.5に比べ2.94.3分の1でしたが、全ての亜株に対してXBB.1.5ワクチンまたは感染によって中和抗体価がかなり上昇したことは重要と考えられました。

モデルナ、ファイザーによる違いは見られませんでした。

Figs3_20240129144001

XBB.1.5 1価ワクチンにより、XBB.1.5よりD614GBA.5に対する中和抗体価が高くなったことは“バックブースティング”(過去のワクチン接種により遭遇(「戻る」)した抗原に対する抗体価の増加と考えられます。このため、我々のBA.5 2価ワクチンブースター過去データと、今回と同じ方法で比較しました。するとBA.5ワクチン2回接種後のD614Gに対するBA.5の抗体価は同等(2.0 vs 2.6倍、下図B)でしたが、XBB.1.5接種(下図C)またはXBBブレークスルー感染後(下図D)のXBB.1.5抗体価は著明に高かった(それぞれ27.0倍28.6倍D614Gに対してはそれぞれ3.2倍、3.0)このことよりXBB.1.5 1価ワクチンの「免疫学的刷り込み」はより軽く(過去の2価ワクチンに比べてバックブースティングの影響が少ない)現在の新興亜株に対する効果がより高いと考えられました。

Fig4bcd

まとめると

・2024年はさらなる新興亜株(日本ではJN.1)が増加しています

・これらに対するXBB.1.5 1価ワクチンは祖先株に比べれば中和抗体価は低いが、以前の2価ワクチンに比べて新興株に対する効果がより期待できます

XBB.1.5 1価ワクチン無料接種期間は2024.3/31までと決められています。お早めの接種をお勧めいたします。コロナウイルスは弱毒化してきたと言われますが、市内病院ではワクチン未接種者が入院するケースが昨年もみられており、また未接種者は後遺症を発症しやすいため、接種回数が少ない方は接種されることをを特にお勧めいたします。新型コロナウイルスワクチン接種について(特設ページ) 横浜市 (yokohama.lg.jp)

 

 

 

2023年11月26日 (日)

新内視鏡システム導入(2023.6月)

2023.6月Olympus EVIS X1という、大学病院クラスの最新型内視鏡システムを導入しました。

① 画像が明るくなりました
② 経鼻内視鏡でもハイビジョン
③ 新しい画像処理技術 
が特長です。

 ① 画像が明るくなりました
A;XP290N(旧型経鼻) B;H290Z(旧型経口ハイビジョン)
C;1200N(最新型経鼻ハイビジョン) D;XZ1200(最新型経口ハイビジョン)
A,Bに比べてC,Dは遠くまで光が届いて明るい画像となっています。Photo_20231126170101

 ② 経鼻内視鏡でもハイビジョン
左;H290Z(旧型経口ハイビジョン)右;1200N(最新型経鼻ハイビジョン)Photo_20231126170201
食道-胃境界部のNBI(狭帯域観察)です。画面右上、茶色いデルタ状の胃粘膜の中に緑色の細い血管が観察されます。最新型経鼻内視鏡は、旧型経口高精細内視鏡と同様にハイビジョン画像が得られます。

 ③ 新しい画像処理技術~TXI~
上段(E,F)はピロリ菌未感染の正常胃粘膜、下段(G,H)はピロリ菌感染による萎縮性胃炎の像です。それぞれ左側は通常観察、右側は今回導入したTXI(構造色彩強調画像)です。Txi
Fの正常粘膜では正常血管(集合細静脈の規則的配列)が点状に赤くなりますが背景粘膜の色調は均一です。Hでは萎縮粘膜が青く強調され通常観察で見える範囲以上に萎縮が拡がっている様子が観察できます。

NBIが赤色を消した短波長のため粘膜浅層の構造を明瞭化するのに対して、TXI(構造色彩強調画像)はもう少し深い組織を画像化する可能性があります。Txi_20231126170501

I,J;粘膜下腫瘤、K,L;のう胞(深部に液体がたまった水風船の状態)で、それぞれ左は通常観察、右はTXIです。TXIでのう胞はより青く強調されます。

④最新型経鼻内視鏡で診断した食道がんの一例

Photo_20231126170901

M;通常観察で中部食道に不整なびらんを認めます。

N;NBI観察では表層血管は茶色になります。手前のびらんの中に、背景粘膜の点状血管に比べやや太めの茶色い血管(矢印、タイプB1血管と呼ばれます)を認めます。

経鼻内視鏡でハイビジョン画像が得られ、食道がんが早期発見できたと考えられます。

(2023.12/04追記)病理組織診断:中分化型食道扁平上皮癌、pT1a-mm、0-2a、20×16mm、Ly0、V0、N0(リンパ節転移なし) の表在癌でした。

 

胃がんNBI画像がホームページから落ちてしまったのでこちらに再掲致します。Nbi

上部消化管内視鏡スクリーニング認定医を取得しました。最近AIが内視鏡にも導入され胃がん・大腸がんの診断に利用され始めています。しかし、AI診断するためにまず大事なことは「キレイな画像を撮ること」です。私事ですが、2014.4月モデル事業として開始された「横浜市胃がん内視鏡検診」創設時から現在まで読影医として参加させて頂き、”網羅性、色調、露出、レンズ面汚れ、粘液付着、空気量”などについて当時横浜栄共済病院院長であられた細川治先生に指導を受けました。当院の内視鏡画像は他と比べて決してひけをとらないものと自負しております。

202311241

2023年10月 9日 (月)

XBB1価ワクチンのエリスなど流行株に対する効果(ファイザー前臨床試験)

CDCHPより、ファイザーXBBワクチン効果に関するPDFから抜粋です。ACIP Presentation 2023/9/12 

C4591020 Results Review (cdc.gov)

 新たな亜株出現にもかかわらず、XBB亜系統が依然として流行しています。(BA.2.86はスパイクタンパクの変異がより大きいが、流行株の1%未満に過ぎません。)Fig1_20231009231501左;緑色EG.5.1が増えています。(米国内)

①<ブースター試験>Balb/c マウス(メス)に従来型ワクチン2回、従来型/BA.4/5 2価ワクチンブースター接種し、4回目を従来型+BA.4/5 2価またはXBB.1.5 1価ワクチンのいずれかを接種しました(10)。偽ウイルス中和アッセイによる中和抗体価を測定しました。

Fig2_20231009231801

XBB.1.5 1価ワクチンは流行株、新株に対して有効な中和能を示しました。XBB.1.5 1価ワクチンは2価ワクチンに比べてより高い中和能を示しました。GMR= 幾何平均抗体価の比

Fig3_20231009231901 Fig4_20231009232001 EG.5.1はEG.5(エリス)のスパイクタンパクにさらに1個変異が加わったもの

 

<初回投与試験>Balb/c マウス(メス)に従来型+BA.4/5 2価ワクチン2回、またはXBB.1.5 1価ワクチン2回接種し、偽ウイルス中和アッセイによる中和抗体価を測定しました。

Fig5_20231009232401

1.5 1価ワクチン初回投与はEG.5.1XBBに対して有効な中和能を示しました。1.5 1価ワクチン初回投与は従来型+BA.4/5 2価ワクチンに比べてより高い中和能を示しました。

Fig6_20231009232401 Fig7

結論

  • 新しい亜株出現にもかかわらず、XBB亜系統が流行しています
  • 前臨床試験において、XBB.1.5 1価ワクチンはXBB.1.5EG.5.1BA.2.86に対して同等の免疫原性を示しました
  • 変異適合ワクチンは抗原一致した株や関連性の近い株に対する免疫反応を改善します
  • 変異適合ワクチンについての前臨床/CMCパッケージは認定基準を満足しました  』

この試験から、日本で9/20開始されたXBB1価ワクチンの、現在流行しているEG.5.1や強い変異をもつBA.2.86に対する有効性が推測されます。

 

2023年8月16日 (水)

オミクロン亜株 EG.5とは?

 大変ご無沙汰しております。WHO2023.8/9にオミクロン亜株「EG.5」をVOI(注意すべき変異株)に引き上げました。EG.5とはどのような亜株なのでしょうか。

EG.5までの流れ>※①(※は出典)

202308151

 オミクロン亜株「XBB.1.9.2」から派生したのがEG.5です。XBB.1.9.2のスパイクタンパクにF456Lという変異が加わったものです。(さらにQ52Hという変異が加わったEG.5.1という亜株がすでに現れています)※② 

 2022年にオミクロン亜株BA.1BA.2BA.5が相次いで流行しましたが、BA.2系統の亜株同士が組み合わさってできた(組換え)のが「XBB」(Pango系統では組換え株は「X~」と名付けます)です。XBBBA.2.75(ケンタウロス)系統のBM.1.1.1BJ.1の組換えでできたと考えられています。※③

Ttamura20221227fig1

 2023年に入るとすでにほぼXBBが占めています。その中で黄土色のEG.5の比率が上がっていることがわかります。WHOVOIに引き上げた理由もわかりますね。※④

20233

 専門家によればこのEG.5はこれまでのオミクロン亜株より特に重症化率が高い報告はないそうです。ただし、高齢者やリスク因子のある方には早期診断と抗コロナウイルス薬治療を勧めています。(抗コロナウイルス薬は発症後早期に有効なため)

 またこの秋に我が国でも実施されるXBB.1.5一価ワクチンは、従来型ワクチンよりも有効と考えられ、接種を勧めています。※⑤

 

(※参考文献・サイト (2023.8.16時点))

CDC COVID Data Tracker: Summary of Variant Surveillance

SARS-CoV-2_variant-reports/reports/variant_report_latest_draft.md at main · neherlab/SARS-CoV-2_variant-reports · GitHub

Virological characteristics of the SARS-CoV-2 XBB variant derived from recombination of two Omicron subvariants | bioRxiv

GISAID - hCoV-19 Variants Dashboard

What to Know About the EG.5 Variant | Johns Hopkins | Bloomberg School of Public Health (jhu.edu)

 

 

2023年4月20日 (木)

オミクロン2価ワクチン XBBにも有効か

ニューイングランドジャーナルオブメディシン(世界で最も有名な医学雑誌の一つ) 2023.4/12付の投稿記事です。

<要旨>

『アメリカ(ノースカロライナ州)で、オミクロン亜株BA.4-BA.5流行下とXBB-XBB.1.5流行下で2価ワクチン効果を調べたところ、同程度の効果が見られたという内容です。

111 2022.11/1を境として前後に受けた2価ワクチンブースター効果を、B.感染、D.入院に至る感染、F.入院または死亡に至る重症感染、H.死亡に至る重症感染 の4つのアウトカム別に効果を判定しています。ブースター(追加接種)の効果はそれぞれ一つ前の接種回数に対する効果を時変ハザード比で解析しています。これによるとオミクロンBA.4-BA.5流行期と、BQ.1-BQ.1.1~XBB-XBB.1.5流行期とで現行2価ワクチン効果はほぼ同程度であることがわかります。(ブルー(BA.4-BA.5)と茶色(BQ.1-BQ.1.1-XBB-XBB.1.5)の折れ線が効果、高い方が効果が高い)』

 

2023.4月現在、日本の既感染率は約4割で、諸外国に比べて圧倒的に低いです。これは今後第9波がいつ起きてもおかしくないことを表します。インバウンド増加、足元のワクチン接種率の落ち込み、5月GW人流活発化などにより、GW明けに第9波が来る可能性を危惧する感染症専門家もいます。5月8日以降は65歳未満・低リスクの方は秋までブースター接種ができませんので、4月中にブースター接種を受けておくのがよろしいかもしれません。

 

 

ご興味のある方は...本文全訳をご覧ください<本文全訳>

『Durability of Bivalent Boosters against Omicron Subvariants

April 12, 2023
DOI: 10.1056/NEJMc2302462

Dan-Yu Lin, Ph.D.
Yangjianchen Xu, B.S.
Yu Gu, B.S.
Donglin Zeng, Ph.D.
University of North Carolina Gillings School of Global Public Health, Chapel Hill, NC

2022.9月、モデルナとファイザーは新型コロナウイルス祖先株・変異株BA.4/52価ワクチンをブースターとして使用開始しました(米国、12歳以上)。以前我々は初期3か月(このうち2.5ヶ月はBA.4-5株が流行した)の効果を報告しましたが、今回この後2か月(BQ.1-BQ.1.1、徐々にXBB-XBB.1.5が優勢となった)2価ワクチン耐久性を報告します。

2022.9/1~2023.2/10の間にノースカロライナ州の約630万人が2価ワクチン接種資格があり約128万人が接種を受けました。新型コロナ感染(うち2価ワクチン接種後)154,581(19,462)、入院;1,208(253)、死亡;867(79)人でした。

4つのアウトカムを設定しました:感染、入院に至る重症感染、入院または死亡に至る重症感染、死亡に至る重症感染。重症感染の時変ハザード比をCox回帰モデルに適合し、各追加ブースター接種の反復感染時変レート比率比を比例比モデルに適合しました(すなわちブースターvs初回接種、2回目ブースターvs初回ブースター、3回目ブースターvs2回目ブースター)。全ての測定値は基礎的特徴(S1、非掲載)で調節されました。ブースター効果は特定の1日における1引くハザード比またはレート比率(100%表示)としました。

結果を図1に示します。入院または死亡に至る重症感染に対する効果は2週後;67.4%4週後;47.5%10週後44.3%20週後;38.4%と次第に低下しました。入院に至る重症感染の効果ややや低く、感染に対する効果はずっと低かったです。死亡に至る重症感染が最大だったが例数が少ないため不確かです。

さらに2022.11/1前後での2価ワクチン効果を解析しました(前はBA.4-BA.5流行、後はBQ.1-BQ.1.1からXBB-XBB.1.5流行に切り替わった時期)効果はおおむね同様でした(1)

さらに年齢、既感染状況、2価ワクチンメーカー別のサブ解析を行いました。感染に対する効果はファイザーよりモデルナ、未感染者より既感染者の方が高かったです。

2つの2価ワクチンとも追加ブースターによってオミクロン感染の減少効果が見られました。2つともBA.4-BA.5をターゲットに作製されていますが、BQ.1-BQ.1.1XBB-XBB.1.5に対しても感染や重症感染低下効果が見られました。入院または死亡に至る重症感染に対する効果が感染に対する効果より高く、時間とともに漸減しました。

1_20230420203501 右側は要旨と同じです。左側はアウトカムごとの2価ワクチン効果です。例えば E.入院または死亡に至る重症感染に対する効果は2週後;67.4%4週後;47.5%10週後44.3%20週後;38.4%と次第に低下しました。』

 

2023年1月13日 (金)

オミクロン XBB.1.5とは?

オミクロンXBB.1.5はXBBの子孫です。(XBBはBA.2.75(ケンタウロス)とBA2.10.1の組み合わせ)

このXBB.1.5がアメリカ合衆国で急速に増えていること、スパイクタンパクにF486Pを持つことなどによる、ヒトACE2受容体(コロナウイルスのヒト細胞への入口)との親和性が上がったことによる感染性増大が話題になっています。

Figs1c1     XBB.1.5はXBBにはないF486P変異を持つ

Figs1b 2022.12月以降、急速にアメリカ国内で増えている

  (Coronavirus variant XBB.1.5 rises in the United States — is it a global threat? (nature.com) 、 

Enhanced transmissibility of XBB.1.5 is contributed by both strong ACE2 binding and antibody evasion)

変異ウイルスで注意すべきことは ①感染力、②病原性(重症化率)、③免疫逃避(過去の感染やワクチン接種の効果) ですが、①感染力は高そうです。それでは③ワクチン効果はどうでしょう。XBB1.5に対するデータはまだありませんが、その先輩であるXBBに対する2価ワクチン(武漢株+BA.5)の効果を調べた文献があります。

それによると武漢株に比べた2価ワクチンの中和抗体価はBA.1BA.54分の1BA.2.75.2BQ.1.1XBB1236分の1でした。

Fig11_20230113225001 A.1価ワクチンブースター1回(計3回接種)はXBBに対する中和抗体価はほぼなし(検出感度以下)、B.1価ワクチンブースター2回(計4回接種)は中間、C.2価ワクチンブースター(計3回接種)のXBBに対する中和抗体価は96で、武漢株に対する中和抗体価の12~36分の1でしたが、1価ワクチンよりも効果がありました

Neutralization against BA.2.75.2, BQ.1.1, and XBB from mRNA Bivalent Booster

最近日本のワクチン接種率は低いです。確かに感染予防の点で、最初(90%有効)よりは見劣りしますが、新たな変異株に対して1価ワクチンより2価ワクチンの有効性が高いことがわかります。また重症化予防効果を実感しますし(未接種患者様は症状が強い傾向です)、コロナ後遺症発症低下効果もあります。

それでは何回打てばよいのでしょうか。2回よりは3回・4回の方が良いことを示唆する文献があります。

イスラエルで医療従事者1万人あまりにファイザー(1価)ワクチン接種し抗体価とワクチン効果を調べた文献です。時期はBA.1、BA.2流行下で、6ヶ月経過観察しています。それによると2回接種に比べ3回・4回接種の方が効果が持続すること、(3回に比べ)4回接種は上乗せ効果が少なく13週でそれがなくなることが示されました。

Fig1a_20230113230801 下(オレンジ色);2回接種、中(青色);3回接種、上(紫色);4回接種 接種後IgG抗体価の経時的変化。2回に比べ、3回・4回接種の方が抗体価が高く・長く続くことがわかります。また4回接種の上乗せ効果は接種後13週でもとに戻っています。(約3ヵ月で抗体価(感染予防効果)が低下することは以前から言われていました。重症化予防効果はもっと長いと考えられています)

この結果から、今後ブースター接種はインフルワクチン同様、流行や季節タイミングを合わせて接種することが必要と思われます。現在第8波の最中ですので、今こそ2価ワクチンブースター接種をお勧めいたします。これまでの接種回数3回未満の方は特に良い適応と考えられます。

Six-Month Follow-up after a Fourth BNT162b2 Vaccine Dose

余談ですが、沖縄出身の大学の先輩が「沖縄では誰かがくしゃみをしたらすぐ”クスケ”と言うのが習慣。くそくらえ、という意味だ」と言ってました。昔から飛沫感染が感染を広めると分かっていたのかもしれませんね。ワクチンの有効性が下がり、タミフルのような安価で大量に使える特効薬がない現在、三密をさけつつ産業を発展させ身を守ることがやはり大事ですね。

 

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